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『塩水浴』は、魚の体力を温存し、自然治癒力を高める効果があります。
魚の体と同程度の塩分濃度の水に泳がせることで。活性をサポートすることを目的として、薬浴治療の前段階として行われることが多い養生法です。
軽度なら細菌や寄生虫などの症状を抑えることができる、魚治療の基本です。
淡水熱帯魚に塩水浴を行う方法と効果、必要なアイテムや期間などについて解説いたします。
目次
プロアクアリストたちの意見をもとに熱帯魚の塩水浴を解説
このコラムは、東京アクアガーデンスタッフであるプロのアクアリストたちの意見をもとに作成しています。
塩水浴は、熱帯魚や金魚、メダカなどの淡水魚に行う、治療の初歩です。
しかし、塩分濃度を誤ったり、塩水交換の頻度が適切でないと、逆効果になってしまうことがあります。
このコラムでは、正しい塩水浴の知識をご紹介します。
熱帯魚の塩水浴方法を動画で解説!
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塩水浴の効果や方法を音声付きで解説します。
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塩水浴とは
塩水浴は、魚の体力を温存して快方に向かわせるための養生方法で、主に淡水魚に対して行う処置です。
生き物は体内に塩分を持っていますが、水は塩分の濃い方へ移動する性質があるため、実は水中に暮らす魚たちは、体内に侵入した不要な水分を尿などで排出して生活しています。
塩分に対して水分が移動するのは『浸透圧』と呼ばれる現象で、魚たちはこの浸透圧に対応するために、常に体内の水分調整を行っています。
飼育水の塩分濃度を調節することで、浸透圧の影響を人工的に減らすのが『塩水浴』です。
塩水浴には、浸透圧への対応に使う体力を温存することで、魚の持つ自然治癒力を高める効果があります。
普段は塩分の少ない・無い飼育しで生活している淡水熱帯魚にとっては、浸透圧が無くなるだけでかなりの余裕が生まれますので、大きな効果が得られるのです。
しかし、淡水熱帯魚のなかには塩分に弱い魚種もいます。
塩分に強い魚種なのかを確認しながら、塩水浴を始めましょう。
塩水浴には殺菌効果がある?
塩の主成分『塩化ナトリウム』には殺菌作用があり、塩分に弱い寄生虫や病原菌をある程度弱らせる効果が期待できます。
実は、塩の殺菌効果の正体は、上記で解説した『浸透圧』が関係してきます。
病原菌や寄生虫の細胞の浸透圧は、熱帯魚の浸透圧よりも低いです。
つまり、熱帯魚にとって快適となる塩分濃度でも、病原菌にとっては高すぎる塩分濃度にすることができます。
病原菌・寄生虫の細胞内から水分を奪い、これらにダメージを与えられることになり、塩の殺菌効果へとつながります。
ただ、病原菌や寄生虫を完全に駆除するためには、0.8%以上の高濃度塩水が必要です。
飼育に慣れたベテランが高濃度塩水浴を行うことがありますが、難易度が高い治療方法です。
塩水浴はサポートとして考え、病気治療などは魚病薬で行いましょう。
このことから、塩水浴と魚病薬が併用されることも多いです。
塩水浴の方法と必要な物
ここでは、塩水浴の方法と必要なものを解説します。
塩水浴の方法
塩分濃度0.5%とは、1Lの水に塩5gを溶かした濃度です。例えば、10Lの水なら塩50gを溶かします。
使用する塩は粗塩か、アクアリウム用(魚の塩浴用)、調味料などが入っていない普通の塩を使いましょう。
水は通常の飼育水と同じで、カルキ抜きしたものを使います。
この塩水を隔離水槽に注いだら、水温を飼育環境と同じに整えてから熱帯魚を導入しましょう。
水温差があると魚はダメージを受けてしまいますので、ご注意ください。
塩水には水を綺麗にするバクテリアが存在しないため、毎日~1日おきに全換水を行い、水質を維持します。
手間に感じられますが、塩水浴を行う魚はそもそも弱っているので、水質が悪化しないように管理しましょう。
尚、熱帯魚のなかには塩分に弱い魚種がいます。
アマゾン川などが原産のワイルド個体には、0.3%などの塩分量からはじめるか、塩水浴は控えるのが良いです。
ブリードの個体やベタのような改良品種は塩分に強いことが多いです。
魚種に注意しつつ行いましょう。
熱帯魚の塩水浴に必要な物
淡水熱帯魚の塩水浴には下記のアイテムを使います。
- 隔離水槽(ガラスがおすすめ)
- 塩
- カルキ抜き剤
- エアレーション
- 水槽用ヒーター
- 水温計
水槽用ヒーターを使用するため、隔離水槽はガラス水槽がおすすめです。容器サイズは魚種にもよりますが、大きな水槽でなくても10L以上入るサイズなら良いです。
室温で水温を管理できる場合は、バケツなどでも問題ありません。
10L以上あれば、急激な水質悪化を防ぎやすいからです。
酸素の供給と塩水の劣化を遅らせるためにも、エアレーションは必ずつけましょう。
塩水浴の期間
塩水は、淡水魚にとって通常の飼育水とは異なる環境です。
2~3日ではなく1週間続けるのは、短期間で何度も水質変化を体験させないためです。
水質の変化は魚たちのストレスやダメージになる要因なため、塩水浴を始めたら一定期間は落ち着いて養生させるようにしましょう。
塩水浴の注意点
熱帯魚を養生させる塩水浴ですが、いくつか注意点があります。
塩をそのまま飼育水槽に投入してはいけない
塩水は、水草には悪影響です。
熱帯魚水槽では水草をレイアウトしていることが多いですので、そのまま飼育水槽に塩を投入することはやめましょう。
また、流木などにも塩分が染みこんでしまいます。
水換えや魚のコンディションを維持する意味でも、塩水浴は隔離容器や水槽で行うことが良いです。
長期間の塩水浴は厳禁
適度な濃度の塩水は浸透圧から魚を守りますが、1週間以上の塩水浴はかえって悪影響です。
塩には、魚の粘膜(ぬめり)を剥離する働きがあります。
塩分0.5%以内なら一度にすべてが剥がれてしまうことはありませんが、若干薄くなります。
粘膜は病原菌などの侵入を防ぐなど、大切な免疫機能です。
飼育を続ければ粘膜は回復していきますが、長い間薄いままにするのは良くありません。
ミネラル分が多い粗塩は粘膜剥離を抑えるといわれていますが、大事をとって長期間の塩水浴は控えましょう。
このことから、塩水浴の期限は1週間ほどが目安とされているのです。
塩水浴を行うタイミング
塩水浴はどのようなときに行うのが効果的なのか、をご紹介いたします。
塩水浴は魚の体力の調整が主な効能ですので、環境が変わったり、不調があると気がおすすめです。
水槽に魚を導入する前
塩水浴は購入した新魚に対して、水槽に導入する前に行うことがあります。
これは、運搬時に消耗した体力を回復させるためや、白点病などの寄生虫や病気を発症しないかを確認するためです。
1週間ほど塩水浴を行い、もし期間中に症状が出れば魚病薬を併用し治療します。
こうした、水槽に病気を持ち込まないための調整を『トリートメント』と呼びます。
塩水ではなく、最初から魚病薬で殺菌することもありますが、様子を見るだけの場合は塩水浴だけでも問題ないです。
熱帯魚に体調不良や症状があるとき
熱帯魚はストレスや水質、エサなど、さまざまな原因で病気になることがあります。
例えば、下記のような状態の場合は、体調不良や病気にかかっている場合があります。
- 底でじっとしている
- ヒレをたたんでいる
- 元気がない
ヒレは魚の健康状態を知れる、もっとも目に入りやすい器官です。
ヒレをたたんでいる場合は体力が下がっていますので、とりいそぎ塩水浴を行いながら原因を特定する、という飼育者も多くいます。
塩水浴を3日ほど行っても症状が改善しない場合や、すぐにわかるほど異変がある場合は魚病薬も併用しましょう。
熱帯魚を病気にさせない飼育ポイント
熱帯魚を長く健康的に飼育するためには、塩水浴を行わなくても良い状態に管理することが理想です。
熱帯魚を病気にさせないための、水槽管理ポイントをご紹介します。
熱帯魚が病気になる主な原因
- 急激な水温の変化・水質悪化
- 餌の与えすぎ
- 病気や寄生虫を持つ生体を水槽に入れてしまう
病気のほとんどは、水質の急変や悪化が原因です。
また、餌の与えすぎは熱帯魚の肥満や消化不良だけでなく、飼育水を汚す原因にもなります。
もし、魚たちの元気が無かったり、病気が発生してしまったら、まずは水換えや掃除をこまめに行うようにしましょう。
特に新しい生体の追加時などは、いつも以上に管理を徹底するのがおすすめです。
飼育水は見た目の状態だけでなく、水質検査薬やチェッカーでも状態を知れます。
まとめ:【塩浴まとめ】熱帯魚の塩水浴の方法と効果、期間、行うタイミング
塩水浴は、淡水熱帯魚の体力を温存・回復させるサポートです。
魚病薬の多くはどうしても魚の体力を消耗させるため、塩水浴と併用して治療することも多くあります。
日頃から熱帯魚を観察したり、掃除などのメンテナンスを行っていれば病気や不調は防げます。
薬よりもマイルドな効果で快方に向かわせる塩水浴ですが、粘膜に多少の影響はあるため、行わずに済むのが一番良いです。
もし、病気や不調を繰り返す場合は、熱帯魚水槽のメンテナンス方法や水換え頻度を見直してみましょう。
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このコラムへのコメントやお悩み相談に届いた質問の回答
塩浴に関して1番親切で分かりやすく詳しい説明と動画だった ありがとうございます
コメントいただきありがとうございます。
今後もより良いコラム作りを精進いたします。
YouTubeでもたくさんの動画を公開しておりますので、是非、飼育のご参考になさってください。
・YouTube『トロピカチャンネル』
https://www.youtube.com/channel/UCF9YeRTzgNI3NMUf9xk1h0Q
よろしくお願いいたします。