らんちゅうの種類とは!系統の解説から主な人気品種までご紹介します
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背ビレの無い丸い背中に、肉瘤の発達した大きな頭、華やかな尻尾と金魚の中でも独特の魅力を持つらんちゅう。
体長は最大で20cmを超えることもある大型種で、その見応えから金魚の王様と称されることもあります。
そんならんちゅうの歴史は古く、日本では江戸時代から飼育が続けられてきました。品種改良が盛んで、産地によって独自の系統が生み出され、その中でも品種が細分化されています。
手間暇かけて育てられたらんちゅうは、他の品種と比べると値が張るものの鑑賞性はかなり高く、最近ではふるさと納税の返礼品に選ばれるほど、地域産業に根付いた価値のある存在となりました。
今回は、らんちゅうの主な系統やらんちゅう系に分類される品種、それぞれの魅力をご紹介します。
目次
プロアクアリストたちの意見をもとにらんちゅうの主な系統や人気の種類を解説
このコラムは、東京アクアガーデンスタッフであるプロのアクアリストたちの意見をもとに作成しています。
ずんぐりむっくりとした体形が可愛らしいらんちゅうは、一匹でも十分な見応えを備えた高級金魚の一種です。
その存在感の高さと品質の良さから、最近はメダカブームの裏で人気が再燃しており、海外からの注目度も高まっています。
ここでは、実務経験から得た知識をもとに、らんちゅうの主な系統や人気の種類を解説します。
らんちゅうの系統
品種改良が盛んならんちゅうは、個体の美しさを競う品評会が各地で開催されてきました。
この時、品評会を開催する地域・団体によって評価のポイントや美しさの基準が異なったため、出品する品評会の評価基準に沿う形で改良が進み、現在ではいくつかの系統に分かれています。
ここでは、らんちゅうの主な系統をご紹介します。
同じらんちゅうでも系統が違うと肉瘤の発達具合や体つきが異なるため、系統の特徴を覚えておくと好みのらんちゅうを探しやすいです。
協会系らんちゅう(関東らんちゅう)
協会系らんちゅうは、日本らんちう協会が品評会の基準として定めた系統です。
元々は東京で作出されたらんちゅうの系譜に連なる形質で、関東で広く飼育されてきた歴史から、関東らんちゅう、東京らんちゅうと呼ばれることもあります。
そんな協会系らんちゅうでは、
- バランスの取れた大きな体と体高
- 美しい泳ぎ
の2点が評価の大きなポイントとなるため、程よく肉瘤が発達した均整の取れたらんちゅうが多いのが特徴です。
他のらんちゅうに比べてややデリケートだという話もありますが、基本的ならんちゅうの飼育環境を守っていれば問題になることはないでしょう。
大阪らんちゅう
主に関西圏で江戸時代から飼育されてきたらんちゅうの系統が、大阪らんちゅうです。
らんちゅうの原種ともいえる昔からの姿形を残した系統で、
- 丸い体に肉瘤がない頭部
- 鼻先に花房と呼ばれる小さな瘤が付くことがある
- 平付け尾
の3つを特徴としています。
瘤の無いつるりとした頭部から腹部にかけて丸みを帯びる体型と、そこから水平に広がる尾びれは他の系統にはない形質で、評価の際もこの体つきが重要視される傾向が強いです。
大阪らんちゅうは、第二次世界大戦後に一度絶滅したとされています。しかし愛好家の努力により同系統の品種を掛け合わせて復元され、今では多く大阪らんちゅうが流通するまでに個体数が回復しました。
そうした背景もまた、人々を魅了するのではないでしょうか。
宇野系らんちゅう
明治時代に宇野仁松氏が提唱した基準にのっとったらんちゅうが、宇野系らんちゅうと呼ばれています。
- 大きく発達した頭部の肉瘤
- 色どり豊かな体色
の2点を重要視しており、他の系統に比べて豪奢で華やかな印象のらんちゅうが多いです。
特に瘤の発達具合は大きなポイントで、ただ大きいだけでなく、体とのバランスや頭部の配置など細かな点が審査されます。成長につれて瘤のバランスが崩れてしまう個体も多い中、美しいまま成長を遂げたらんちゅうがより高く評価されるのです。
また、肉瘤を目立たせるためか比較的体高は低めで体も小さく、緩やかな泳ぎが良いとされているのも宇野系の特徴と言えるでしょう。
外国産のらんちゅう
らんちゅうは海外でも人気で、近頃は中国やタイなどで養殖されたらんちゅうが多く流通するようになりました。
外国産のらんちゅうは日本とはまた違った美的観点から改良されており、異なった趣を持つ品種が多いのが特徴です。特に体色は顕著で、日本ではあまり評価されてこなかった黒や茶色の形質が、瑪瑙らんちゅう、茶らんちゅうなどの品種として確立しています。
また、日本で作出されたらんちゅうが海外で養殖されて日本に輸入されているケースもあり、こちらは日本産のものよりも安価で入手しやすいです。
外国産のらんちゅうをミックスして販売されていることも多く、掘り出し物が見つかることも少なくありません。
らんちゅう系の主な品種
らんちゅうはその特徴的な形質から、様々な金魚の作出に貢献してきました。
ここでは、らんちゅうをベースに作出された代表的な品種をご紹介します。
一見すると違いが分かりづらい品種もいますが、尾の形や繊細な体色などそれぞれに独自の特徴や歴史があり、とても興味深いです。ぜひ、奥深い金魚の世界に触れてみてください。
江戸錦
江戸錦はらんちゅうと東錦の交配によって作出された品種です。
赤・黒・白・浅葱色の4食が複雑に入り混じるキャリコ柄に、らんちゅうの特徴である発達した肉瘤と背びれのない丸い体を持ちます。
江戸錦の品評では特に浅葱色を重要視する傾向があり、浅葱の割合が多めでありながら全体のバランスが取れた柄を持つ個体ほど、高値が付きやすいです。
尾の形は華やかな三つ尾や四つ尾で、体に対してやや短め。尻尾をフリフリと一生懸命振って泳ぐ姿がとても可愛らしいのですが、泳ぎは苦手なので泳ぎの早い和金型の金魚との混泳は避けましょう。
ちなみに、同じキャリコ柄で尾が長く伸長する京錦という品種もおり、こちらは優雅な印象が強くなります。
桜錦
江戸錦とらんちゅうを交配して作出されたのが、桜錦です。
体色は朱色と白色の紅白模様。鱗の輪郭が見えない透明鱗と普通の鱗の2種が混ざる、モザイク透明鱗を持つのが大きな特徴で、この鱗の風合いが桜が舞うように見えることから名づけられました。
桜錦は平成8年に品種登録されたばかりの金魚の中では比較的新しい品種ですが、明るく可愛らしい体色から人気が高く、流通量も安定しているので入手に困ることはないでしょう。
ちなみに、らんちゅう系の金魚は上見の姿が美しくみえるよう改良された品種が多いのですが、桜錦の独特の体色を堪能するならば水槽を正面から鑑賞する横見がおすすめです。
花房
鼻の左右に付く、花房と呼ばれる突起が房状に発達する品種です。
中国で作出されたとされていますが、詳しい経緯や歴史は解明されていません。
かつては日本花房と中国産の花房の2系統が流通しており、日本花房はオランダ獅子頭に近い背びれのある体型、中国の花房は背びれの無い丸形のらんちゅう体型と区別されていました。
しかし、日本花房が絶滅の危機に瀕して流通量が激変したため、現在では花房というと中国産のらんちゅう型花房を指すことが大半となっています。
花房は横見、上見どちらでも楽しめる品種ですので飼育容器に指定はありませんが、飼育に際しては、鼻の房を傷つけないようにシンプルなレイアウトを心がけましょう。
フィルターの吸い込み口に吸われてケガをしないよう、スポンジをはめるなどの対策も有効です。
秋錦
秋錦は、明治時代にらんちゅうとオランダ獅子頭を交配して作出された品種です。
作出された当初は背びれの無いオランダ獅子頭というイメージだったようですが、太平洋戦争の折に一度絶滅、終戦後に復元されました。
そのため、現在の秋錦は必ずしもオランダ獅子頭の形質を強く受け継いでいるわけではなく、尾の長いらんちゅうといった様相のものも多いです。ただ、基本的に肉瘤は良く発達します。
金魚の中ではややマイナーで玄人向けの品種のため、流通量は少なめですが、色柄が豊富で好みの個体を見つけやすいので、見かけたらぜひ飼育に挑戦してみてください。
津軽錦
江戸時代から津軽地方で飼育されてきた品種で、青森県のねぶた祭りで見られる金魚ねぶたのモデルになった金魚としても知られています。
作出過程については長く謎に包まれてきましたが、近年では固定化される前のらんちゅうと他の金魚を掛け合わせて作られたとされる節が有力です。
こちらも太平洋戦争の混乱で一度絶滅の危機に瀕しましたが、現在は復元されて津軽錦として固定化にも成功しています。
らんちゅう体型に長い尾を持つ品種で、肉瘤はあまり目立ちません。小さなうちはセピア色のような地味な色味をしており、赤く色づくのに他の品種よりも時間がかかりますが、成長すると、朱色の体にひれの付け根が金色に輝く美しい姿を見せてくれるでしょう。
派手さはないものの、そのストーリーも含めて魅力のある品種です。
水泡眼
目の下の大きな水泡が特徴的な水泡眼は、中国で昔から飼育されてきた金魚で、1950年代から日本にも輸入されるようになりました。
長いこと中国の宮廷や富裕層の間でしか飼育されない門外不出の高級品種であったため、作出過程は一切不明。背びれがないことなどかららんちゅうに近い品種であるとか、出目金の突然変異種であるなど、様々な説が飛び交うミステリアスな一面を持ちます。
水泡眼最大の特徴である水泡の正体は目の角膜が肥大したもので、中はリンパ液です。
ただ、この水泡はとてもデリケートでどこかに引っ掛けたりして破れてしまうことも。
治療をすれば治りますが、傷から体調を崩してしまうことも多く、金魚の中でもかなり繊細な管理が求められる品種です。
そのため、飼育の際はシンプルなレイアウトを心がけましょう。泳ぎも得意ではないので混泳は同種のみに留めておくのがおすすめです。
水泡眼は上見の姿がとても美しいので、ぜひ底の浅い飼育容器で観賞してみてください。
まとめ:らんちゅうの種類とは!系統の解説から主な人気品種までご紹介します
今回は、らんちゅうの系統やらんちゅう系の金魚の品種について解説しました。
らんちゅうは品評会の評価基準からいくつかの系統に分かれており、それぞれ趣の違った形で品種改良がなされてきました。
肉瘤の大きいもの、体色が美しいもの、泳ぎが優美なものと系統によって得意な分野がありますので、お好みのらんちゅうを探してみるのも楽しいでしょう。
また、らんちゅうを元に他の品種を掛け合わせて作出された改良品種は、どれもずんぐりとした体格が可愛らしいです。
高級金魚とされることも多いですが、最近は外国産の流通量も増えて昔より安価に入手できるようになりました。
泳ぎが不得意など飼育にコツがいりますが、飼育が困難なわけではないので、初心者の方でも飼育を始めやすいです。
コレクションしたり、交配したりと色々な楽しみ方ができるらんちゅうをぜひ飼育してみてください。
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