水槽のKHとは!水草水槽・海水水槽でも重要な炭酸塩硬度について
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アクアリウムで水質というとpHが頭に浮かびますが、本来、水質は水の中に含まれる様々な成分が複雑に関係しあって決まるものです。
水の硬度を示すGHやサンゴ飼育で話題に上るCa(カルシウム)、水草育成に欠かせないCo2(二酸化炭素)など、水に含まれる成分は多岐に渡り、これらのバランスを整えることで生き物が暮らしやすい環境を作り出せるのです。
中でもKH(炭酸塩硬度)は、水の汚れや添加したものの影響でpHが急降下するのを防ぐ緩衝材のような物質で、Co2を添加する水草水槽やpHを高めに維持したい海水魚水槽では、KHの値を意識することで理想の環境に近づけやすくなります。
そこで今回は、KHの役割やコントロールするコツについて解説します。
目次
プロアクアリストたちの意見をもとにKH(炭酸塩硬度)の役割やコントロール方法を解説
このコラムは、東京アクアガーデンスタッフであるプロのアクアリストたちの意見をもとに作成しています。
アクアリウムでよく話題に上がるpHですが、pHの値をコントロールするにはKHがとても重要になります。
特に水草水槽や海水魚水槽では、KHをコントロールすることで水質を維持しやすくなりますので、KHの役割をしっかり理解しておきましょう。
ここでは、実務経験から得た知識をもとに、KH(炭酸塩硬度)の役割やコントロール方法を解説します。
水槽のKHとは
水質と言われるとどうしてもpHに目が行きがちですが、合わせて意識したいのがKHの値です。
pHとKHは切っても切れない関係にあるため、KHの値をコントロールできればおのずとpHも安定し、アクアリウム全体の調子を上げることにもつながるでしょう。
ここでは、アクアリウムにおけるKHについて解説します。
少し専門的で理解しづらい部分もありますが、KHについて理解を深めてみてください。
KHは炭酸塩硬度のこと
水質は様々な成分が複雑に関係しあって決まるので一概には言えませんが、基本的にはKHの値が高ければアルカリ性の硬水、低ければ酸性の軟水に傾けやすくなります。
水の硬度というと、GH(総硬度)が浮かびますが、こちらは水の中に含まれる全てのミネラル分を計測した値のことです。KHはその中から水に溶けた炭酸水素イオンだけを計測したものとなります。
そして、アクアリウムでいう硬度はKHの値を重要視する傾向にあるため、例えば軟水を好む魚と言われたら、KHを下げて弱酸性に傾けるというような感じで覚えておくと良いでしょう。
また、ここまでで酸性・アルカリ性という言葉が出てくることからお察しの通り、KHとpHは干渉しあう関係にあるため、pHをコントローするためにはKHの値も合わせて知っておくことが大切です。
KHは市販のテスターを使って簡単に計測できるので、pHと併せて把握することをおすすめします。
KHのメリット
水槽内におけるKHのメリットには以下のようなものが挙げられます。
- pHの急変を防ぐ緩衝材となる
- 溶存二酸化炭素量が分かる
- サンゴの発育が良くなる
まず、KHには緩衝力がありpHが急激に変化するのを防いでくれます。
例えば、魚のフンや食べ残しが溜まるとpHを急低下させてしまう危険がありますが、KHの値が高ければpHの変化を緩やかにできるということです。
また、水草水槽でCO2添加によるpH低下を防ぐのにもKHが効果的なので、水質変化に弱いエビ類や稚魚、魚種を飼育している場合はKHを意識すると良いでしょう。
次にKHとpHの数値から、飼育水内のおおよその溶存二酸化炭素量を知ることができます。
水草水槽では特に溶存二酸化炭素量を把握することは大切です。相関表があれば一目でわかるので、用意しておくとよいでしょう。
最後に、KHはサンゴの発育にも影響を与えます。
サンゴは炭酸塩とカルシウムによって骨格を形成するので、水槽内のKHはとても大切です。不足するとサンゴの成長が悪くなってしまいます。
また海水魚はpH8.0程度を好むので、pHをコントロールする意味でもKHは欠かせない要素です。
KHのデメリット
メリットが多いKHですが、過剰になると水槽に悪影響が出ることもあります。
- コケが生えやすくなる
- 水草が弱る
- 軟水を好む生き物には悪影響
KHの値が高いと、コケが生えやすくなります。これは水質がアルカリ性に傾くことで、植物の養分であるHCO3(炭酸水素塩)をコケが吸収しやすくなってしまうことが原因です。
そしてこの状態が続くと、コケに養分を取られてしまった水草に栄養が行き届かなくなってしまうことも。
KH値が安定しないと水質も不安定になりやすいので、水草が環境変化についていけずに弱ることも考えられます。
また、KHが高すぎると水が硬水寄りになるため、アマゾン川原産の魚や水草といった軟水を好む生き物を飼育することが難しくなります。
このようにKHは適度な値ならばメリットが豊富ですが高すぎると水槽に悪影響となるため、水槽の状態や飼育する生き物に合わせて、KHの値をしっかりコントロールすることが大切です。
KHを上げる方法
ここからは、KHの値をコントロールする方法をご紹介します。
まずは、KHを上げたいときに有効な手段です。
一般的にKHの値は、
- 淡水水槽:3°dKH以上
- 海水水槽:7~10°dKH
程度が適正と言われており、水質をアルカリ性に傾けたい海水水槽では、淡水に比べてKHをやや高めに維持する必要があります。
特にハードコーラルを飼育している場合は、サンゴがKHを消費してしまうため10°dKH以上の値を求められることも少なくありません。
飼育している生体や水の状態にもよりますが、上記の基準よりもKHが下がっていて水槽内で不具合が生じているようなときは、KHの値を上昇させる対策を試してみてください。
水換えをする
KHを上げたいときにまず試していただきたいのが水換えです。
KHは水の汚れなどのpHを下げる成分が水槽内に多くあると低下しやすくなりますので、水換えをして水の汚れを改善すればKHの低下を止めることができます。
その上、日本の水道水にはKHが2~3°dkH程度含まれているので、新しい水を入れることでKHを上昇させることも可能です。
石や砂利をレイアウトする
底砂やろ材にサンゴ砂やカキガラ、龍王石、青華石などの素材を入れると石に含まれる成分が溶け出して、KHを上げることができます。
ただし、この方法では成分が溶け出す量をコントロールすることができないので、思うような効果が得られなかったり、逆に上がり好きてしまったりと調整が難しいです。
そのため、砂利やろ材はあくまで補助的な役割と割り切って、別の方法をメインにKHを維持するのが良いでしょう。
KHが上がる添加剤を使用する
KHを上げる添加剤を使用すれば、確実にKHを上昇させることができます。
水質調整剤にはKH以外にも様々な要素に効果がある製品が多数販売されていますので、添加するときはその他の成分も計測して必要なものを添加するのが良いでしょう。
ただし添加剤は手軽な反面、使いすぎると水質のバランスを崩してしまう可能性がありますので、注意してください。
バランスの良い水質にするには、やはり定期的に検査薬を使って水質を確認することと、水換えを怠らないことが大切です。
KHを下げる方法
先ほどご説明した通り、KHが高すぎるとコケが生えやすくなったり、水草が調子を崩したりなどの影響がでてきます。
また、アマゾン川流域原産のブラックウォーターを好む生体を飼育しているときも、弱酸性の軟水にするためKHを下げたほうが良い場合がありますので、水槽の状態に合わせてKHを下げる対策を行いましょう。
ピートモスを使用する
一部の熱帯魚の産卵床として知られるピートモスは、KHを下げるアイテムとしても使用できます。
ピートモスはコケや水生の植物が堆積してできた泥を砕いたもので、水に入れると水質を弱酸性の軟水に傾けてくれる性質を持ちます。
この水質はアマゾン川のブラックウォーターに近い水質のため、KHを下げるのにも効果的というわけです。
KHを下げる目的で使用する場合は、ネットに入れたピートモスをろ材と一緒にフィルターに入れておきましょう。製品にもよりますが、約1か月程度効果が持続します。
ただし、ピートモスを入れると飼育水が茶色く色づいてしまうため、鑑賞性が損なわれる点には注意してください。
また活性炭と同時に使うと思うような効果が得られない場合があります。
RO浄水器を使う
水道水自体に含まれるKHを下げたい場合は、RO浄水器を使用します。
先ほど日本の水道水のKHは2~3°dKHとお話しましたが、お住いの地域によっては値が標準より高いことがあります。また、標準値よりも低いKHを求める生き物を飼育している場合も、KHをあらかじめ下げておく必要があるでしょう。
RO浄水器は水道水に含まれるあらゆる不純物を取り除いた純粋を作る機材で、KHも除去することができます。
やや高価な機材ではありますが、生体によっては一度純水にしてから、添加剤を使って好みの飼育水を作り上げたほうが飼育しやすい場合もありますので、必要に応じて導入を検討してみてください。
KHが下がる調整剤を使用する
水質調整剤を使ってKHを下げることもできます。
ただし、KHを上げるときと同様に使い方を間違えると悪影響が出ますので、慎重に添加してください。
一気にKHを下げると生き物が体調を崩してしまいますので、調整剤を添加したら翌日に水質検査を行い、必要に応じて再添加する、というような流れで、少しずつ時間をかけて理想の値に近づけていくのがおすすめです。
また、調整剤を使ってもKHが上がってしまうようなときは、水槽の中に何か原因がある可能性がありますので、他の方法と併用しながらKHをコントロールしていきましょう。
まとめ:水槽のKHとは!水草水槽・海水水槽でも重要な炭酸塩硬度について
今回は、アクアリウムにおけるKHについて、KHがもたらす効果やコントロール方法を解説しました。
KHは飼育水の水質を管理するのに欠かせない要素です。適切な値を維持することで、pHの急変を防ぐことができます。
特に、水質にうるさい魚やサンゴを飼育している水槽や難しい水草の育成では、KHを意識することで飼育がうまくいくことも多いです。
ワンランク上のアクアリウムを目指すならば、ぜひKHの理解を深めて飼育に役立てましょう。
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