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飼育水に混ざるゴミや汚れ、有害な成分を除去してきれいにしてくれるろ過フィルターは、飼育する生き物の特徴や水槽サイズに合わせて選定するのが一般的です。
水槽の内容に合っていないと、水質の悪化が早まったり生き物が疲弊してしまったりといった影響が出ることがあるため、水槽の状況を総合的に見て慎重に機種を決める必要があります。
淡水魚は、海水魚に比べて水質に寛容な品種が多い反面、強い水流が苦手でろ過フィルターが協力すぎると疲れてしまうという魚も多いです。
また、水草を育成していたり、水を汚しやすい肉食魚を飼育していたりなど、水槽のスタイルによってろ過フィルターに求めるポイントが異なる点も考慮しましょう。
今回は、淡水魚の飼育で活躍するろ過フィルターの種類と、水槽サイズ別におすすめのろ過フィルターをご紹介します。
目次
プロアクアリストたちの意見をもとに淡水魚におすすめのろ過フィルターを解説
このコラムは、東京アクアガーデンスタッフであるプロのアクアリストたちの意見をもとに作成しています。
ろ過フィルターを選ぶときは、ついろ過能力ばかりに目が行きがちです。
もちろん性能は大切な要素ですが、それ以外にも飼育している魚に合っているかや、水槽のスペックに適しているかなどを確認しながら総合的に見て適切なものを選ぶことが大切です。
ここでは、実務経験から得た知識をもとに、淡水魚におすすめのろ過フィルターを解説します。
淡水魚の基本的な飼育環境
ろ過フィルターは飼育水の水質を適切に保つための機材です。
選定する上で、飼育している生き物が好む環境を理解しておくことはとても大切な意味を持ちます。
まずは、淡水魚の飼育における基本的な飼育環境について解説します。
淡水魚が好む水質
淡水魚は種を問わず基本的に、有害物質が少なく酸素が豊富な環境を好みます。
有害物質とは魚の餌やフン、老廃物から発生するアンモニアや亜硝酸といった物質のことで、これらが水中に蓄積すると、魚にストレスを与えたり病気や最悪の場合命を落としてしまったりする危険が高いです。
また、魚はエラから水中に溶け込む酸素を取り込んで活動しているため、水槽内が酸欠状態になるのも大きな問題。
魚が体調を崩してしまうばかりか、先ほどの水中の有害物質を分解してきれいにしてくれるバクテリアの働きが弱まって、急激な水質の悪化を引き起こす可能性もあるため、酸欠にならないよう管理する必要があります。
ろ過フィルターは、このような有害物質の除去や水中への酸素供給をまとめて行うことができる機材です。
設置することで淡水魚の好む水質を維持しやすくなります。
メダカや金魚、ベタなど一部の魚種ではろ過フィルターを設置せずに飼育する場合もありますが、基本的には淡水魚水槽でもろ過フィルターを設置してください。
ただし、ろ過フィルターを設置しているからと言って水換えをしなくてよいわけではありません。ろ過フィルターと定期的な水換えを両方行って、初めて水質の維持が可能となります。
初心者の方はpHの値や水温を定期的に測定し、数値が安定していることを確認しながら管理をすると確実です。
ろ過の種類と働き
ろ過フィルターは、「物理ろ過」「生物ろ過」「化学ろ過」の3種類のろ過を用いて、水をきれいにします。
物理ろ過は、エサの残りやフンなどの目に見える汚れを漉しとって除去する方式です。これにより飼育水をクリアに保つことができます。
生物ろ過では、硝化バクテリアがアンモニアや亜硝酸などの有害物質を分解します。有害な物質は物理的にこし取ることができないので、水質を維持するには生物ろ過がとても重要です。
化学ろ過は、活性炭やゼオライトなどのろ材を使って、水中の微量な化学物質や臭いを取り除きます。化学ろ過は必須ではありませんが、水槽立ち上げ直後などで水に濁りや臭いが出ているときに補助的に導入すると、問題解決に効果を発揮するでしょう。
ろ過の能力はろ過フィルターの性能とろ材の組み合わせで決定します。
水槽の環境を維持、改善するときは、水槽のサイズや飼育する魚の種類に応じて最適なろ過フィルターを選ぶと同時に、ろ材も工夫してみるのがおすすめです。
淡水魚におすすめのろ過方式とその特徴
ここからは、淡水魚の飼育におすすめのろ過システムとそれぞれの特徴を解説します。
ろ過フィルターはろ過システムの種類によって、ろ過能力や特徴が大きく異なります。
水質をとにかくきれいにしておきたいときはろ過能力の高いフィルター、稚魚が泳ぐ繁殖水槽やヒレの長い熱帯魚を飼育する水槽ならば水流が穏やかなフィルター、というようにろ過フィルターの特徴を考慮しながら、水槽のスタイルにあわせて選定しましょう。
また特に初心者の方は、メンテナンス性や設置の難易度も確認しておくと失敗しにくいです。
外部フィルター
淡水水槽で使用されることが多いろ過システムの中で、最もろ過能力が高いのが外部フィルターです。
水槽の外に設置したフィルター本体と水槽をホースで繋いで水を循環させる仕組みで、一番の特徴は、フィルター本体にろ材をたくさん仕込めるということ。
水槽の状態に合わせて生物ろ過に強いリングろ材や活性炭などの化学ろ過に特化したろ材を組み合わせて、ろ過能力を高められます。
一方、本体の値段がやや高額な点と酸素供給量がそこまで多くないことから、淡水魚の中でも特に水質に敏感な熱帯魚を飼育する水槽や、水草を育成する水槽におすすめです。
特にCO2を添加している水草水槽には外部フィルターが理想的で、ろ過槽が密閉されていて水が酸素に降れる機会が少ない分、CO2を効率よく水中に取り込むことができるでしょう。
ちなみに、外部フィルターはホースの接続が甘いと水漏れをすることがありますので、十分に注意してください。
特に初心者の方は、メンテナンスの時などに定期的にホースの接続を確認することをおすすめします。
上部フィルター・外掛け式フィルター
上部フィルターと外掛け式フィルターは、ポンプで吸い上げた水を水槽の上部に設置したろ過フィルターに通して水をろ過する仕組みです。
ろ過された水は上から落として水槽に戻すため、たくさんの酸素を取り込むことができます。
上部フィルターはろ過槽が大きいので、ろ材をたくさん仕込んだり組み合わせを変えてカスタマイズすることが可能。
ろ過能力を強化しやすく酸素供給力も高いので、酸素を多く消費する金魚や大型肉食魚などの飼育に向いています。
水中のゴミを素早く吸い上げて除去できるので、水をクリアに保ちやすいのもポイントです。
一方水槽の縁に引っ掛けて使用する外掛け式は、小型水槽にぴったりのコンパクトなサイズ感が最大の魅力です。
ろ過の仕組みは上部フィルターとほぼ同じなため、小さいながらしっかり水をろ過することができます。
底面フィルター
底面フィルターでは、水槽の底面に敷いたろ過板の上に底床(砂利など)を被せて、ろ材として活用します。
底床全体に定着した硝化バクテリアの力で有害物質を分解・ろ過するため、とにかく生物ろ過が強力で水質を安定させやすいのが最大のメリットです。
一方で底床が汚れてしまうとろ過能力が落ちてしまうため、通常よりもしっかりめに底床を掃除する必要があります。
金魚や肉食魚などのフンが多い生き物を飼育していて、底床にゴミがたまりやすかったり、大型水槽で底面の範囲が広かったりすると、掃除の負担が大きくなりやすいでしょう。
このことから、水をあまり汚さないメダカや小型の熱帯魚を飼育する小型水槽や繁殖水槽など、用途を絞って使用するのがおすすめです。
投げ込み式フィルター
投げ込み式フィルターは、水槽内に設置した本体にエアポンプを接続して水を循環させるシンプルな構造のろ過フィルターです。
金魚水槽で良く見かけるブクブクと言えば、想像しやすいのではないでしょうか。
ろ過フィルターの中でも特に安価で酸素供給力が高いので、メダカや金魚のろ過フィルターとしてはもちろん、エアレーションを兼ねたサブフィルターとしてや、隔離水槽で一時的に使用する予備のフィルターとして用意しておくのもおすすめです。
ただし、構造が簡単な分ろ過能力は控えめでろ材のカスタマイズもできないため、本フィルターとして使用するならば飼育できる生き物が限られることがあります。
スポンジフィルター
スポンジフィルターは、本体のスポンジ部分にバクテリアを定着させて生物ろ過を行うフィルターです。
エアポンプで水を循環させるシンプルな構造なので、初心者の方にも扱いやすいでしょう。
メンテナンスも簡単で、スポンジが汚れたら飼育水で軽くすすぐだけで再利用できます。
スポンジフィルターは、給水口がスポンジで覆われているので小さな魚が吸い込まれる心配がなく、また水流も穏やかなので、遊泳力のない稚魚やエビ類を飼育する水槽に最適です。
外部フィルターなどに比べるとろ過能力は控えめですが、メダカやアカヒレなどの水質変化に強い魚であればスポンジフィルターだけで終生飼育ができます。
水中フィルター・流動フィルター
水中フィルターは、本体を水槽の内壁に取り付けるだけで使用できる手軽さが魅力です。
本体サイズは10~20cm程度のコンパクトなものなので、水中に設置しても邪魔になることが無く、水槽周りをすっきり見せることができます。
メダカや金魚、小型熱帯魚を飼育する小型水槽で活躍するフィルターです。
流動フィルターは、本体のろ過槽の中でろ材が水流に乗って動き続ける仕組みのろ過フィルターで、生物ろ過の能力が非常に高いのが特徴です。
ろ材が水流でコロコロとかき回されるため、酸素や水流がろ材全体に行き届いてバクテリアの働きが活性化します。ろ過槽の中に淀みや嫌気性ができないので、水質が安定しやすいでしょう。
ただし、流動フィルターにはゴミをこしとる階層がなく、物理ろ過ができないため、ほかのフィルターのサブ機として使用するのがおすすめです。
水槽サイズに合わせたおすすめのろ過フィルター
ここからは、水槽サイズごとにおすすめのろ過フィルターをご紹介します。
ろ過フィルターは機種よってろ過できる水量が異なります。
また、水槽の大きさによって飼育に適した魚種の傾向やそれによる水質の安定感などが変わるため、水槽サイズに合ったろ過方式を選ぶことも意識してみましょう。
~45cm水槽
45cm以下の小型水槽は水量が少ないため、水換えなどのメンテナンスがしやすい一方で、水質が変化しやすいです。
また、水槽内が狭く遊泳スペースが限られるため、スマートに設置できて水流が穏やかなろ過フィルターが向いています。
そこで候補となるのが、
- 投げ込み式フィルター
- スポンジフィルター
- 水中フィルター
- 外掛け式フィルター
の4種類です。
投げ込み式フィルターやスポンジフィルターは、ろ過能力が控えめとお話ししましたが、小型水槽ならば十分に活躍できる性能を備えています。
金魚やメダカ、稚魚を飼育している水槽ではこちらがおすすめです。
小型熱帯魚を飼育する場合や水草を植えこむ時は、水中フィルターや外掛け式の方が安定して水質を管理できるでしょう。
水草を育成するならば、生体数を控えめにしてこまめな水換えを心がけるのがポイントです。
60~90cm水槽
60~90cmの中型水槽は、金魚やメダカ、小型~中型熱帯魚の飼育、水草の育成など多種多様な水槽スタイルを堪能できるサイズです。
このような特徴からろ過フィルターは、
- 外部フィルター
- 上部フィルター
などの様々な水槽に対応できるオールマイティなろ過方式を選ぶのがおすすめ。
この2種はどちらもろ過槽が大きくて、たくさんのろ材を仕込めるため、水槽の内容に応じてろ過能力をカスタムしやすいです。
将来的にアクアリウムの幅を広げたくなった時にも対応しやすいでしょう。
ただし、ろ材の詰め込み過ぎは禁物で、外部フィルターについてはろ過槽の7~8割程度に量を留めることを意識してください。
ろ材の量が多すぎるとろ材が目詰まりを起こして通水性が損なわれ、ろ過の効率が悪くなってしまいますので、十分に注意が必要です。
120~150cm水槽
水量が多い120~150cmの大型水槽は、水質を安定させやすい反面、いざトラブルが発生した時に影響する範囲が大きくなりがちです。
特に機材トラブルは水槽内の環境を急変させてしまう可能性が高いため、強力なろ過能力を備えていて長期使用に耐えられる丈夫なろ過フィルターを選定しましょう。
この条件に合致するのが、
- 外部フィルター
- 上部フィルター
の2種類です。
特に外部フィルターは交換用のパーツが販売されているので、故障してしまっても自分で修理が可能。各社のアフターケアも手厚いので長期使用で対処がしやすいです。
また、上部フィルターと外部フィルターの併用や、各フィルターを2台設置して水槽を管理するのもおすすめの方法で、もし一台が故障したりメンテナンスで停止させたりした時でも、もう一台が稼働していれば水質の急変を防げます。
上部フィルターと外部フィルターの併用は、大型肉食魚などでよくみられる組み合わせで、外部フィルターの酸素供給力が低めという欠点を上部フィルターで補えるので、生き物に最適な環境を作り出すことができるでしょう。
まとめ: 淡水魚のろ過フィルターとは!水槽サイズ別おすすめろ過フィルターも紹介
淡水魚飼育のろ過フィルターについて解説しました。
飼育水をきれいにろ過して循環させるろ過フィルターは、淡水魚に適したな環境を維持するために欠かせない存在です。
水槽サイズや飼育する魚種に応じて、適切なろ過方式を選ぶことが健康に飼育する鍵となります。
小型水槽では手軽で扱いやすい投げ込み式やスポンジフィルター、中型水槽ではろ過能力の高い上部フィルターや外部フィルターがおすすめです。大型水槽では外部フィルターの複数設置や複数のろ過方式を組み合わせることで、トラブルリスクを軽減できます。
また、いずれの環境でもろ過フィルターの能力を過信しすぎるのは禁物で、必ず定期的な水換えや掃除は行うようにしましょう。また、ろ過フィルターも定期的に掃除が必要です。
今回の記事を参考に、飼育する淡水魚にぴったりなろ過フィルターを選定してみてください。
ほかにもさまざまなコラムがありますので、そちらも参考にしてください。
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