
金魚飼育者から恐れられている病気のひとつに「松かさ病」が挙げられます。
松かさ病には確実な治療法が現在も見つかっておらず、症状が進行すると治すことのできない不治の病としても知られている大変恐ろしい病気です。
主な原因は水質悪化などですが、よほど飼育環境が悪くなければまず発症しない病気です。
日頃から水槽をきれいに保ち餌を与えすぎないことが予防につながります。
今回はそんな松かさ病の症状や少しでも完治に近づけるための治療方法などについてわかりやすく解説しますので、金魚を飼育している方は是非こちらのページを参考にしてみてください。
目次
松かさ病とは
松かさ病は痛々しい見た目と不治の病というイメージから、金魚飼育者からかなり恐れられている病気です。
ここでは松かさ病の症状や原因などについてわかりやすく解説していきますので、しっかりと確認しておきましょう。
症状と経過
松かさ病とはもっとも治療が困難だと言われている魚の病気で、金魚以外にグッピーやメダカが発症する場合もあります。
重症化すると鱗が逆立ちカサが開いた松ぼっくりのような見た目になることが、病名の由来です。
初期症状としては体の数カ所に内出血のような赤い斑点が見られ、よく観察すると鱗の一部が若干逆立っているのがわかるかと思います。体が少しふくらんだように感じるかもしれません。
症状が初期の段階では、餌食いや泳ぎには支障をきたさず、元気なことが多いです。
症状が進行すると腸内の炎症が悪化するため便秘をするようになり、鱗の開きもひどくなります。
末期症状では水槽の底でじっとしていることが多くなり、個体によっては目が腫れあがる「ポップアイ」の症状が見られることも。
鱗の逆立ちは全身に広がり、息を引き取ります。
松かさ病の原因は複数ある
非常に痛々しい姿で症状が進行する松かさ病ですが、原因は複数あると考えられています。
松かさ病のおおもとの原因は、エロモナス・ハイドロフィラ(運動性エロモナス)という細菌の感染です。
しかしこの細菌は川や土壌、一般的な淡水水槽にも生息している常在菌のため、元気で正常な個体に悪影響をおよぼすことはまずありません。
魚たちがエロモナス菌に、感染してしまう理由は、ストレスなどによる免疫低下が大きく関わっています。
免疫低下を引き起こす要因として考えられるのが、水質の悪化や餌の消化不良、混泳の失敗です。
まず水質悪化ですが、これは水換え不足やフィルターの目詰まり、底砂を長期間掃除しないことでも起こります。汚れがたまれば菌も増えていきます。
消化不良は餌の与えすぎや古くなった餌を与え続けること、混泳の失敗は魚同士の相性が悪いことによるケンカやいじめが原因です。
こうした要因が総じて魚にストレスを与え免疫力が低下し、エロモナス・ハイドロフィラに感染しやすくなり、松かさ病を引き起こしてしまうのです。
松かさ病の治療方法
松かさ病は不治の病とも言われていますが、初期症状の段階で適切な治療をすれば回復する可能性もあります。
実際、東京アクアガーデンのスタッフの1人に、松かさ病の金魚を完治させた経験があります。ここでは、経験談をもとに治療方法を考えていきます。
塩浴とこまめな水換えが基本
松かさ病に見られる鱗の逆立ちや体のむくみは、エロモナス菌などが体内に感染し、水分代謝がうまくできなくなることによって起こると考えられます。
そのため鱗の一部が盛り上がっている程度の初期症状であれば、塩水浴で浸透圧を調整し、水分代謝をサポートしつつ、こまめな水換えで自己治癒力を高めてやれば、快方に向かうことが多いです。
塩水の濃度は0.5%(水1Lに対して塩5g)で、2日に1回水換え(全換水)をしながら様子を見ましょう。
使用は自己責任になりますが、最近ではエプソムソルトという入浴剤としても使われるバスソルトも、初期の松かさ病に効果があることが確認されてきました。
こちらの濃度は0.03%(水10Lに対してエプソムソルト3g)に調節し、通常の塩水浴と同じように2日に1回水換えをします。
エプソムソルト浴をさせる場合は、成分が100%硫化マグネシウムのものを使用しましょう。
塩水浴もエプソムソルト浴も、濃度を守ってこまめに水換えすることが大切です。
ただし、鱗が開ききっている重症の場合やポップアイを併発しているときは回復が難しいため、とにかく初期の段階で対処することが重要と言えます。
薬餌が効果的な場合もある
松かさ病は通常、エロモナス菌が体内(腸や筋肉など)に侵入することで発症します。
つまり薬の成分を腸まで届ける薬餌も、松かさ病に効果があるということです。
逆に言うと、薬浴など魚の体表を殺菌するような治療法では効果が薄く、回復しないことが多いので注意しましょう。
薬餌は作り方自体は簡単なのですが、薬の性質上、長期保存は難しいです。
だからといって薬餌を与えすぎると腸を傷めてしまいますし、症状が落ち着いてからも消化機能が回復せず餓死してしまうことも十分に考えられます。
薬餌は1日3粒を目安に与え、余った分は冷暗所で保存しつつ5日以内に使い切りましょう。
薬餌の詳しい作り方については以下の記事で解説していますので、ご覧になってみてくださいね。
松かさ病の予防方法
最後に松かさ病の予防方法ということで、
- 水槽を清潔に保つ
- 消化不良は慎重に治す
- 水温に気を付ける
という3つのポイントを解説していきます。
水槽を清潔に保つ
松かさ病を予防する上でもっとも大切なのは、水槽を清潔に保つということです。
特に金魚は底砂をつつく習性があるため、砂利の掃除は徹底的に行ないましょう。
ただし、注意したいのはろ過フィルターの掃除です。
ろ過フィルターは目詰まりを解消する程度のことであればこまめに実施するべきですが、ろ材を頻繁に洗ったりすると、生物ろ過に必要なバクテリアを減らしてしまいかねません。
ろ過装置のメンテナンスは2週間に1度くらいのペースにとどめておくのがおすすめです。
消化不良は慎重に治す
金魚が白い糞やゼリー状の糞をする場合は、消化不良を起こし下痢をしています。
下痢の症状は松かさ病の原因菌でもあるエロモナス・ハイドロフィラが由来していることもあるため、早めに対処しましょう。
下痢症状が長く続く場合は、金魚の自己治癒力と抵抗力を高めつつじっくりと治す方法がおすすめです。
3日間ほどの絶食で糞を出し切らせてから1日1粒だけの給餌を開始し、確実に消化できるようになるまで粘りましょう。
こまめな水換えや生菌剤入りの餌を与えることも、消化不良を予防するのに効果的です。
水温に気を付ける
金魚の適水温は15~28℃とかなり幅広いのですが、高温すぎると酸素不足で金魚が疲弊し、低温すぎると消化機能が落ちてしまいます。
一方エロモナス菌は26~28℃で活性化する傾向にありますので、金魚水槽は24~25℃に保温しておくのがおすすめです。
まとめ:金魚の松かさ病は不治の病?原因と対策・治療方法!薬餌の有効性も解説
不治の病とも言われている松かさ病ですが、その原因は水槽のメンテナンス不足や極端な水温変動など、水質の悪化が大きく関係しています。
適度な水換えや掃除で水質を保ち、金魚の病気を予防しましょう。
また、松かさ病は重症化すると回復が難しいですが、初期の段階で気が付くことができれば完治が不可能ということはありません。
日頃からよく金魚を観察し、些細な変化を見逃さないことが大切です。
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