うつる魚の病気7種!早期発見・治療が必要な蔓延しやすい魚病と感染対策
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熱帯魚や観賞魚を飼育しているうえで、病気は避けては通れません。
どんなに注意していてもちょっとしたことで体調を崩してしまうことがあります。
中でも、一匹が感染すると水槽内の他の魚にうつしてしまう危険がある”うつる病気”や、水槽全体のコンディションが低下することで発病する”蔓延しやすい病気”は、初手の対応が遅れると取り返しのつかな事態になってしまうこともあり得るため、特に注意が必要です。
水槽内に感染が広がる病気に罹患していることが分かったら、速やかに対処して、病気の感染を抑える対策をしましょう。
今回は、魚の間で感染が拡大するうつりやすい病気や蔓延しやすい病気を7種ご紹介します。
病気によって対処法が異なりますので、しっかり治療法を覚えて飼育に活かしましょう。
目次
プロアクアリストたちの意見をもとに早期発見・治療が必要なうつりやすい魚病7種を解説
このコラムは、東京アクアガーデンスタッフであるプロのアクアリストたちの意見をもとに作成しています。
熱帯魚が感染する病気の中でも特に注意が必要なのが、水槽内で病気が蔓延するうつる病気です。
初期の治療や対処の仕方によって感染拡大を抑えることができますので、病気に気づいたら早急に対策をしましょう。
ここでは、実務経験から得た知識をもとに、早期発見・治療が必要なうつりやすい魚病7種を解説します。
他の魚に移る可能性のある病気7種
他の魚にうつる、水槽内で蔓延する魚の病気は、寄生虫が原因のものか、水の汚れや水温の変化などで水槽全体が調子を崩してしまったときに発症する水槽の常在菌由来のものが大半です。
原因によって治療法や感染拡大を防ぐ対策の仕方が異なりますので、まずはどの病気に罹患しているのかを正確に把握しましょう。
ここでは、他の魚にうつる可能性のある病気や水槽内で蔓延する7種の病気について、症状や治療法などを解説します。
白点病
白点病はウオノカイセンチュウ(白点虫)という繊毛虫の一種に寄生されることで発症する、感染力が非常に高い病気です。
魚に寄生した白点虫は栄養分を吸い取りながら成長し、成虫になると魚から離れて水中を漂いながら分裂、増殖をしてまた新たな宿主に寄生する、というサイクルを繰り返します。
このことから、病魚を隔離しても水中に白点虫が残っている限り、他の魚たちにどんどん病気が広まってしまう可能性があるのです。
治療法・対策
白点病に感染すると、体表に白い点が付いて体を壁面やレイアウトにこすりつけるような動きを見せるようになります。
異常がみられる魚が一匹のみならば隔離して治療しても良いですが、感染拡大を防ぐためには本水槽全体を薬浴するのがおすすめです。
白点病の治療には『メチレンブルー水溶液』や『グリーンFリキッド』、『アグテン』などを使用します。水草やレイアウトへの影響を抑えたいときは『グリーンFクリアー』も有効です。
また、白点虫は高水温に弱い傾向があるため、治療中は水温を28℃程度まで上げるとより高い効果を発揮します。
ちなみに白点虫は自然発生するものではなく、魚に付着して水槽内に持ち込まれることがほとんどです。原因は新魚であることが多いので、新しい魚を入れる前にトリートメント期間を設けることで、水槽への病気の持ち込みを防ぐことができます。
尾ぐされ病
尾ひれが充血したのちに、溶けるようにボロボロになってしまう尾ぐされ病は、カラムナリス菌に感染することで発症します。
カラムナリス菌は水槽内の常在菌で、元気な魚であれば感染することはなく、魚同士でうつし合うこともありません。
では、なぜ尾ぐされ病が複数出てしまうことがあるのかというと、カラムナリス菌感染のそもそもの原因が水槽内の環境悪化にあるからです。
カラムナリス菌は、水質の悪化や水温の変化などが原因で魚に大きなストレスが掛かって免疫力が落ちたときに感染します。このような水槽内の環境変化は飼育魚全体に影響するため、一匹発症したのを皮切りに複数の魚が一斉に尾ぐされ病の症状を見せることがあるのです。
治療法・対策
尾ぐされ病を発症した個体は、隔離して『ヒコサンZ』を使った薬浴治療を行います。
また感染の拡大を防ぐため、水槽内の環境改善にも着手してください。
水温は適正か、水質に問題無いか確認の上、水換えや底砂、ろ過フィルターの掃除をして飼育環境を整えましょう。
エラ病
エラ病もカラムナリス菌が原因で発症する病気です。
特に金魚に多い病気で進行が早く、症状が進むとエラの機能が低下して酸欠から命を落とすこともあるため、早めの対処を心がけましょう。
尾ぐされ病と同じく環境の変化によるストレスで発症しやすくなるため、同一水槽内の複数の魚に感染が広がる危険があります。
治療法・対策
エラ病の初期症状は、
- 泳ぎが鈍い
- 底の方で動かなくなる
といった、ほかの病気でも見られる不調が多く、これだけでエラ病と確定するのは少々困難です。
ただ、このような軽傷であれば塩水浴で回復する可能性があるため、まずは塩水浴で様子を見ましょう。
症状が改善しないときは、様々な病気に効果がある『グリーンFゴールド顆粒』を使った薬浴に切り替えます。
また、尾ぐされ病と同じく水槽の環境が悪化していることで発症する病気ですので、病魚の治療と同時に、飼育環境の改善に取り組んでください。
赤斑病
体表にうっ血したようなアザが浮かぶ赤斑病は、エロモナス菌感染症の一つとして知られています。
エロモナス菌も水槽の常在菌で、やはり水質の悪化などから免疫力が落ちた魚が感染するため、感染の連鎖が起こりやすいでしょう。
エロモナス菌由来の感染症は進行が早く症状が進むと、穴あき病や松かさ病など重篤な病気を併発して命を落とす危険があります。
赤斑病は初期段階であれば比較的完治がしやすいので、症状が見られたらできるだけ早く治療を開始することが大切です。
治療法・対策
赤斑病を発症したら、まず水換えとろ過フィルターや底砂の掃除を行います。ごく初期の段階であればこれだけで病気が治癒することもあるため、清潔な環境を整えましょう。
症状の進行がみられるときは、病魚を隔離して『観パラD』で薬浴をします。
観パラDは水草やバクテリアにも影響が少ないので、病魚が複数匹いるときなどは本水槽に直接添加して薬浴するのもおすすめです。
イカリムシ
金魚やメダカ、ドジョウなどの日本産淡水魚を中心に感染するのがイカリムシです。
非常に小さな甲殻類の仲間で、成虫になるとイカリのような頭部を魚に突き刺して寄生し、栄養分を吸い取ります。
イカリムシに寄生されると、食欲不振や元気がなくなるといった症状がみられるほか、イカリムシが刺さった傷から別の細菌が入り込んで二次感染が起こることも。
また、成虫と幼虫で対処法が異なる点や再生能力が非常に高いこと、一度発生すると水槽内に蔓延して次々と魚たちが寄生されてしまうことなどから、感染拡大しやすく駆除が難しい寄生虫です。
治療法・対策
イカリムシは成虫と幼虫で対処が異なるため、2つの治療を並行して行う必要があります。
まず、魚の体に寄生する成虫のイカリムシは、突き刺さったものをピンセットで引き抜く以外に治療法がありません。
桶などの容器に移した病魚を手で優しく抑えて引き抜きますが、この時、イカリムシがちぎれてしまうと残った部分から再生してしまうため、確実に全身を引き抜くよう慎重に行いましょう。
幼虫はとても小さく肉眼では確認できませんが、水中を漂いながら脱皮を繰り返して成長します。この段階であれば専用の薬が効きますので、水槽全体を『ムシクリア液』で薬浴してください。
また、イカリムシも外部からの持ち込みで水槽内に発生します。新魚を追加するときは、必ずトリートメント期間を設けて、イカリムシの発生を予防しましょう。
ウオジラミ
ウオジラミは体長3~5mm程度の小さな甲殻類です。
毒針を持つ厄介な寄生虫として知られており、魚の体表に針を刺して血液や影響分を吸い取ります。毒針で指された箇所は炎症を起こすほか、傷口から細菌が入り込んで二次感染を引き起こす危険も。
また、体が小さな魚が大量に寄生されると、ウオジラミが出す毒素が原因で命を落とすこともあります。
ウオジラミも他の寄生虫と同様に水中で脱皮を繰り返しながら成長し、成虫になると魚に寄生するという性質を持つため、一匹感染が見られたら水中にウオジラミが蔓延している可能性が高いです。
治療法・対策
ウオジラミに寄生されたら病魚を隔離して、ピンセットなどを使って体から引き抜きます。ウオジラミを取り除いたら、次は感染症予防のため『グリーンFゴールド顆粒』などで薬浴を行いましょう。
また、水槽内には水中に幼虫や卵が残っている可能性がありますので、『レスバーミン』や『ムシクリア液』を使った薬浴をしてください。
ちなみにムシクリア液は、基本的に日本淡水魚をターゲットにした薬です。対象の魚種を確認の上、薬を選択しましょう。
治療が難しい寄生虫症(ギロダクチルス、メタセルカリアなど)
寄生虫の中には、市販の魚病薬では駆除できない厄介な種類が存在します。
主に吸虫で、どれも自然発生することはなく新魚と共に水槽に持ち込まれることがほとんどです。
ほかの寄生虫と同じく、新魚導入前にトリートメント期間を設けることで、水槽への蔓延を防ぐことができます。
ギロダクチルス、ダクチロギルス
ギロダクチルスやダクチロギルスは、魚のエラに寄生してエラ病を引き起こす寄生虫です。症状は先ほどご紹介したカラムナリス菌由来のエラ病と変わりませんが、市販の薬が効かず民間でできる有効な治療法が少ないため、治療が難しいです。
金魚など塩水に強い魚種ならば、0.8%程度の高濃度の塩水浴を12~24時間ほど行うことで治癒する可能性があると言われています。ただ、高濃度の塩水は魚に負担をかけるため、病魚の様子を見ながら慎重に治療を進めてください。
また、ギロダクチルスやダクチロギルスは、虫が嫌がるハーブ成分を配合したキョーリンの『パラクリア』という餌を与えることで予防ができます。病魚に与えたところ駆除ができたという話もあるようなので、餌が食べられるときは治療に取り入れるのも効果的です。
メタセルカリア
メタセルカリアはクリノストマム症の原因となる、魚の筋肉組織に寄生する吸虫の一種です。
寄生された魚は体表に2~3mm程度の楕円形のデキモノが発生しますが、それ以外に大きな症状が現れることはありません。
宿主の直接の死因となるようなダメージを与えることはあまりないのですが、治療法がなくイカリムシのように取り除くこともできないのが厄介なところ。
むしろ薬浴やピンセットなどで刺激を与えると、メタセルカリアが筋肉組織から飛び出して周辺が壊死してしまう危険があるため、そっとしておくのが最も有効な治療法と言えるでしょう。
ただ、水槽のそのまま入れておくと他の魚に感染が広がる恐れがあるため、必ず隔離をしてから見守るようにしてください。
病気が発生した時の対処法
どんなに注意深く飼育をしていても、ちょっとしたきっかけで水槽や魚が調子を崩して病気になってしまうことはあります。
しかし、もし病気が発生してしまっても慌てず適切に対処をすることで、感染の拡大を最小限に抑えることが可能ですので、対策を覚えておきましょう。
ここでは、病気が発生したときに他の魚を感染させないための対処法を解説します。
水換え頻度を上げる
エロモナス菌やカラムナリス菌を始めとした細菌感染症が発生した水槽は、掃除や水換えの頻度が足りておらず、水質が悪くなってしまっているケースがほとんどです。
水が汚れて水質が悪化した環境では魚がストレスを受けて免疫力が低下し、通常ならばかからないような病気を次々と発症してしまいますので、まずは早急に水換えをして水質を改善しつつ、水槽メンテナンスの頻度を見直してみましょう。
水換えは1~2週間に一度1/3程度の水量が目安とされていますが、水槽サイズや飼育数によってはもう少し回数を増やさなければならない場合もあります。
水質検査薬を使うと水が汚れるペースをつかみやすくなるため、上手く活用しながら適切な頻度を探りましょう。
また、水槽内でも底砂やろ材の中は汚れが溜まりやすいです。これらの汚れは細菌の温床になりやすいため、掃除を欠かさないようにしてください。
細菌感染症は人間でいう風邪のようなものですが、侮ると大きな病気に発展することもあります。
魚たちが健康に過ごせるよう、しっかりと環境を整えてあげましょう。
魚病薬を適切に使用しよう
病気が疑われる魚を見つけたら、速やかに別水槽に隔離して薬浴や塩水浴などの治療を行います。
病気によっては水槽丸ごと薬浴する必要があるものもありますが、基本的には病魚は隔離した方が感染拡大を抑えることができると考えて問題ありません。
薬浴は症状に合わせた薬を用意して使うのが一番ですが、すぐに治療を開始したいのに薬を購入するのに時間がかかる、どの病気が判別が付かないという時のために、とりあえず使用できる常備薬を用意しておくのも一つの方法です。
常備薬としては、幅広い病気に効果のある『グリーンFゴールド顆粒』や『ヒコサンZ』が重宝します。
初心者の方だと薬浴を始めとした魚の治療はハードルが高く感じるかもしれませんが、説明書きに従って行えば難しいことはありませんので、ためらわず治療を開始してください。
初期段階で素早く適切な治療を行うことで、病気が治癒する確率が上がりますし、ほかの個体に広がるのを防ぐことができます。
魚の病気は水槽状態のシグナルです。治療と並行して根本的な原因を探り、取り除きましょう。
まとめ:うつる魚の病気7種!早期発見・治療が必要な蔓延しやすい魚病と感染対策
他の魚にうつる、水槽内で病気が蔓延する病気と、治療法や感染を拡大させない対策について解説しました。
水槽内でうつし合ってしまう病気は、水中の常在菌由来のものか寄生虫由来のものが大半です。
イカリムシやウオジラミなど、繁殖力が高い寄生虫は新魚を導入するときに外部から持ち込まれる可能性が非常に高いので、水槽に入れる前にトリートメント期間を設けることで予防ができます。
カラムナリス菌やエロモナス菌は、水槽内の環境が悪化することで病気を発症します。水換えや底砂、ろ材の掃除をしっかり行い、水槽環境を清潔に保ちましょう。
病気が発生したら、早期発見、早期治療が感染拡大を防ぐ一番の方法です。
日ごろから小まめに魚たちの様子を観察し、異変に気が付ける下地を作りましょう。
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