交雑するアクアリウムの魚・生き物とは!混泳を避けたい組み合わせを紹介
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熱帯魚には、近縁種と呼ばれる近い関係にある品種が数多く流通しています。
見た目や性質が似通っている魚を同じ水槽で飼育するとレイアウト全体にまとまりが出ますし、好みの環境が一致していて混泳させやすいため、近縁種を水槽に取り入れているという方も多いのではないでしょうか。
確かに近縁種を使ったアクアリウムは幻想的で美しいものですが、その一方で交雑には十分に注意が必要です。
品種改良の過程であえて他種を交配してオリジナルの形質を作り出すといった手法もありますが、一般的な熱帯魚水槽で起こる交雑では形質を管理しきれず、いつの間にか美しい体色が失われてしまうといったトラブルの原因になることもあります。
今回は、熱帯魚の交雑について解説します。
交雑しやすく混泳を避けた方が良い組み合わせもご紹介しますので、飼育する際の参考にしてください。
目次
プロアクアリストたちの意見をもとに熱帯魚の交雑について解説
このコラムは、東京アクアガーデンスタッフであるプロのアクアリストたちの意見をもとに作成しています。
混泳水槽では熱帯魚が異種同士で交配する、交雑が起こることがあります。
交雑は新しいオリジナルの熱帯魚が生まれるワクワク感がある一方、元々持っていた良い形質が失われて、体色や見た目が劣化してしまうなど魚の鑑賞面や健康面に影響が出る可能性があるため、注意が必要です。
ここでは、実務経験から得た知識をもとに、熱帯魚の交雑について解説します。
熱帯魚の交雑(ハイブリッド)とは
熱帯魚の交雑(ハイブリッド)とは、異なる種類の魚が自然に交配することです。
自然界でも時折みられる現象ですが、飼育水槽では交雑の確立が格段に高く、条件が揃うとどんどん雑種化が進行しまうため、種を守る観点から注意が必要な事象とされています。
水槽は交雑が起こりやすい
飼育水槽が自然界よりも交雑が起こりやすいとされる大きな要因が、混泳です。
混泳水槽は、生息地や種を問わず世界中の様々な熱帯魚を組み合わせて自分だけのアクアリウムを作り上げられる魅力があります。
しかし、その一方で、繁殖形態や見た目、特性が似ている近縁種を知らず知らずのうちに混泳させてしまい、交雑に至ってしまう危険も。
近縁種の熱帯魚は遺伝子的にも共通点が多く、異種間で子供を作ることができてしまうケースがありますので、飼育する魚の特性を良く確認してから混泳するようにしましょう。
交雑の影響や弊害
交雑は、しっかり管理された環境で行う分には決して悪いことではありません。
例えばメダカの品種改良では、あえて違う品種同士を組み合わせて新しい形質を作り出すことがありますし、熱帯魚でも人工的に異種間で交配して作出されたハイブリット種が数多く流通しています。
意図的な交雑は、新しい品種を生み出す上での通過儀礼と言っても過言ではないのです。
しかし、意図しない交雑となると話は別で、
- 繁殖能力を持たないことが多い
- 短命、奇形などの個体が生まれやすい
- 元々持っていた形質が失われる
- 繁殖を繰り返すうちに退色することがある
といった交雑のデメリットが強く出てしまい、熱帯魚の鑑賞性や健康を損ねてしまうことも少なくありません。
そもそも、多品種を組み合わせた繁殖は形質の管理がとても難しいので、一般的な飼育水槽では同じ品種同士での繁殖に留めておくのが賢明です。
交雑する場合は個人の範囲で楽しもう
もし交雑の結果ユニークな個体が生まれたとしても、第三者に譲るなどの行為は止めましょう。
交雑から生まれた熱帯魚はどのような形質を持っているかが未知数ですし、この個体が偶然繁殖能力を有していて、譲渡先で子供をなしてしまうと、どんどん雑種化が進んで素性のわからない魚になってしまう危険があります。
正しい種を守るためにも、交雑にチャレンジするときはあくまで個人の範囲で楽しむようにしてください。
交雑するアクアリウムの魚・生き物の組み合わせ7種+2
ここからは、アクアリウムでもよく飼育されるメジャーな生き物の中から特に交雑しやすい組み合わせを7種類と、番外編として実は混泳しない方が良いペア、反対に交雑が喜ばれるケースを2つご紹介します。
交雑しやすい組み合わせを知っておくことで、安全で美しい混泳水槽を維持できます。
水槽に入れる生き物をお探しの際の参考にしてみてください。
グッピー×ソードテール
最初にご紹介するのが、グッピーとソードテールの組み合わせです。
どちらも卵胎生メダカの仲間で繁殖方法が似ているため、一緒に飼育していると異種間で交配することがあります。
ただ、グッピーとソードテールは種族がかなり遠いため、交配しても受精することがなく、子供が生まれることはほぼないと考えてよいでしょう。
ソードテールは気性がやや荒い魚で、特に同じ卵胎生メダカの仲間が相手だと追いかけまわしてしまうといったトラブルに発展することがあるため、交配の話を抜きにしても混泳は慎重に行う必要があります。
モーリー×グッピー
モーリーとグッピーも卵胎生メダカの仲間で、一緒に飼育していると交配することがあります。
ソードテールと違いこちらは種族も同じ近縁種であるため、子供を成すことも可能。モーリーとグッピーの交雑ではユニークな形質を持った個体が生まれることがあり、”モッピー”や”グーリー”という愛称で親しまれています。
品種改良の可能性を秘めた組み合わせということで、国内外で交配を試みる愛好家もいますが、交雑から産まれた個体は繁殖能力がないことがほとんどで、今のところ成功に至っている例は無いようです。
外国産グッピーと国内産グッピーの混泳
実は、グッピー同士の混泳でも交雑に注意が必要な場合があります。それが外国産のグッピーと国内産のグッピーの組み合わせです。
外国産と国内産のグッピーは同じグッピーながら血統が異なるため、交配させることで元あった形質が失われて、想定外の見た目をした子供が生まれることがあります。
特に国産グッピーは長い年月をかけて品種改良を行い、血統を維持してきたものばかりです。計画的に交配をするのであればよいですが、むやみな交雑はやめましょう。
とはいえ、異なる柄の個体を組み合わせて新しい色柄を楽しむのもグッピー飼育の醍醐味。自己責任で楽しむ分には、外国産と国内産の交雑にチャレンジしてみるのも面白いです。
プラティ×バリアタス
プラティとバリアタスはどちらも卵胎生メダカの近縁種で、同じ水槽に入れているだけで簡単に交雑してしまいます。
バリアタスの方が一回り程体が大きいですがそれ以外は良く似た二種ですので、子供が生まれてくることも少なくありません。交雑を避けたい場合は別々に飼育するのが賢明です。
アフリカンシクリッド各種
アフリカンシクリッド間では、品種を問わず交雑が起こります。
アフリカンシクリッド自身は体色によって同種他種を見分ける能力があるようで、野生では基本的に同じ体色のものと交配することで交雑を防いでいると言われていますが、状況次第では色の違うアフリカンシクリッド同士がペアになることもしばしば。
空間が限られた水槽内であればなおのこと、別種と交配しやすいです。さらにアフリカンシクリッド同士から産まれた子供は特に大きな欠陥を持たず生まれてくることが多く、繁殖機能も問題ないため、放っておくとどんどん交雑が進んでいくでしょう。
ただ、雑種の個体は代を重ねるごとに美しい体色が失われて黒ずんでいってしまう傾向があるため、美しい体色を楽しみたいならばやはり交雑には気を付けたほうが良いです。
近年の研究で、自然下でも水質の悪化などによってアフリカンシクリッドの交雑が進行していることが分かっており、黒っぽい個体が増えてきていることが問題になっています。
ミナミヌマエビ×チェリーシュリンプ
お掃除生体として親しまれるミナミヌマエビと、カラフルな体色が人気のチェリーシュリンプも、交雑しやすい組み合わせです。
現在流通しているミナミヌマエビの多くは中国原産のシナヌマエビという品種なのですが、チェリーシュリンプはこのシナヌマエビの改良品種。
元は同じ品種であったことから両者はペアとしてもまったく問題が無く、同じ水槽に入れておくと普通に子供が生まれてくることがあります。
子供以降の世代も健康面では問題ないことが多いのですが、交雑が進むにつれて体の色が徐々に原種の茶色に近づいていってしまう点には注意が必要です。
チェリーシュリンプのカラフルな魅力が失われてしまいますので、鑑賞面を重視するならばミナミヌマエビとの混泳は避けましょう。
改良メダカ×野生のメダカ
同じく、原種と改良品種の関係である野生のメダカと改良メダカも容易に交雑します。
改良メダカは野生のメダカに比べてやや繊細なため、水槽一緒に飼育することは少ないかもしれません。
しかし、近年は飼いきれなくなった改良メダカを川に放流してしまう事例が相次いでおり、自然下での交雑が問題視されています。
見た目が特徴的な改良メダカの形質を受け継いでしまった個体は、自然では生き残るのが大変ですし、交雑により野生メダカ本来の特徴が薄れてしまう可能性も。
また、交雑が進むことで純粋な野生メダカの個体数が減少して、いつか絶滅してしまう危険もあります。
自然を破壊する行為と言っても過言ではありませんので、飼育していたメダカを放流するのは絶対にやめてください。
メダカは繁殖が容易で個体数も増えやすいです。繁殖は計画的に行い、自分で管理できる数にとどめておきましょう。
ニッポンバラタナゴ×タイリクバラタナゴ
日本原産のニッポンバラタナゴと中国原産のタイリクバラタナゴは、アクアリウム用に輸入されたタイリクバラタナゴの放流によって、自然界での交雑が問題になっている組み合わせです。
非常によく似た近縁種で、同じ環境にいると簡単に交雑してしまいますので、在来種保護の観点から放流しないのはもちろん、水槽内でも混泳は避けたほうが良いでしょう。
野生ではタイリクバラタナゴの進出がかなり深刻で、近年ではかなりの数の生息地で種が置き換わってしまっていることが確認されています。
タイリクバラタナゴはニッポンバラタナゴの産卵床を先取りしてしまうため、ニッポンバラタナゴが満足に繁殖できな状況に置かれているのです。
外来種の放流が交雑以外でも様々な問題を引き起こす代表的な事例と言えます。
番外編1:ミナミヌマエビ×ヤマトヌマエビ
ここからは番外編ということで、まずはミナミヌマエビとヤマトヌマエビの組み合わせについてご紹介します。
この二種は様々な魚種と混泳が可能なお掃除生体として知られていますが、実は両者の混泳はあまり推奨されていません。というのも、ヤマトヌマエビが脱皮する際に放出する物質がミナミヌマエビを興奮させる物質に似ていることから、脱皮中のヤマトヌマエビをミナミヌマエビが攻撃してしまう危険があるからです。
水槽をきれいにするため複数種類のお掃除生体を入れたくなりますが、お掃除生体にも相性があります。適性や特性を確認しながら組み合わせて導入するのがおすすめです。
番外編2:レモンピール×小型ヤッコ
交雑のよって価値が上がる事例もあります。
品種改良からもわかる通り、交雑では同種交配では見られないような色合いや特徴を持つ個体が誕生します。特に海水魚は淡水魚に比べて飼育環境での品種改良が難しく、まれに自然下で交雑したユニークな個体が捕獲されると、一点物として希少価値が付いて通常よりも高値で取引されることもしばしば。
海水魚のハイブリット固体で流通量が多く人気なのが、レモンピールの交雑種です。
中でもレモンピールとナメラヤッコやエイブリーエンゼルとの組み合わせは、鮮やかなレモンイエローの体色にヤッコたちの青いヒレの特徴が乗って、非常に美しい姿となります。
まとめ:交雑するアクアリウムの魚・生き物とは!混泳を避けたい組み合わせを紹介
交雑する魚や生き物をご紹介しました。
品種改良などではしばしば他種同士を組み合わせることがありますが、一般的な飼育水槽では形質を管理しきれないため、交雑は避けたほうが良いです。
特に繁殖力が高い卵胎生メダカ同士や近縁種同士の組み合わせでは、予期しない形質の個体が生まれたり、本来持つ魅力や機能が失われてしまったりといった弊害が出ることも少なくありません。
また、外来種を放流することで純血の在来種が激減してしまうといった生態系への影響も考えられます。
アクアリウムにおいて繁殖は大きな魅力ですが、しっかり管理ができてこその楽しめるもの。交雑の危険にも目を向けながら、計画的に飼育することが大切です。
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